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第20回 受託者について詳しく
受託者になるための資格?
今回は財産を託される人、「受託者」についてみていきましょう。
受託者になる資格って何か必要なんでしょうか?
法律上、「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」については受託者になることができません。これらの方は単独で有効な法律行為をすることができないからです。
言い換えると、これらの方以外であれば受託者になれるということです。
「家族信託」だからといって、必ずしも家族を受託者にしなければならない、ということではないのね。
そうですね、もし家族や親族に受託者のなり手がいなかったり、負担が重すぎるという場合には、司法書士や弁護士などの専門家に任せることも検討すべきでしょう。また受託者は個人である必要はなく、法人もなることができます。
なお、受託者が受益者となることも可能ですが、以下の場合に限られます。
①複数の受益者のうちの1人である場合
②単独で受益者となる場合で、それが1年未満の期間であるとき
②の1年未満というのは、どういうこと?
受益者と受託者が同じ人になった場合、1年が経過すると信託は強制的に終了する、ということです。
これは、「『受託者=受益者』という状態が継続することが、信託の本質に反しているから」というように説明されることが多いですね。
なるほど、そういうことなんですね。ところで、受託者には複数の人間がなることはできるんですか?私と弟の託朗が同時に受託者になることはできるのかしら。
受託者の人数につき信託法上の制限はありませんので、複数の人間を受託者に設定することは可能です。
ただし受託者が複数の場合、原則として信託事務は受託者の過半数の決定により行われることになるため、受託者間の意思が一致しないと信託事務が滞ってしまうというリスクもあります。
こういった理由から、当初から受託者を複数にするという信託契約はあまり一般的ではないと思います。
ここまでが、いわば受託者になるための「形式的・法律的」な要件です。
次に、受託者の実質的な要件です。
何よりも、受託者は委託者が信頼できる人である必要があります。
家族信託は委託者の想いや願いをかなえる仕組みです。ですから、受託者は委託者の意思を尊重し、委託者の大切な財産をしっかりと管理・運用できる人でなければなりません。
しっかり者の頼子なら問題ないわね。
受託者ができること
ここからは、受託者ができることについてです。
受託者は、信託の目的にしたがって受益者のために信託財産の管理・処分を行うのが役割です。
つまり、「信託の目的達成のために必要な行為=受託者にできること」といえますね。
具体的には、財産を現状維持するための保存行為、収益物件の運用行為、財産の売却といった処分行為など、受託者には広範な権限が与えられています。一方で、信託契約で受託者の権限を制限することももちろん可能です。
下図は不動産処分の例ですが、あくまでも一例なので、ここにある以外の行為を定めておくこともできます。
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受託者の義務
このように、受託者には幅広い権限があります。そこで、権限の乱用を防ぎ、また受益者を保護するために、次のような義務が課せられています。
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受託者が亡くなったら?
受託者の役割、大まかに理解することができました。
ふと思ったのですが、受託者である私に万が一のことがあった場合、家族信託はどうなってしまうんですか?
受託者が亡くなったとしても、それだけでは家族信託が終了とはなりません。
ただ、受託者の地位は相続の対象とならないことから、受託者の相続人がそのまま受託者にはなりません。
つまり受託者が亡くなると、受託者不在のまま家族信託は継続する、という不自然な状態になってしまいます。
※なお、受託者不在のまま1年が経過すると、強制的に信託契約は終了となります。
何か対策はできるんですか?
はい、このようなリスクを避けるため、実務的には予備の受託者(「第二受託者」)を定めておくことが一般的ですね。トラスト家の場合、第一受託者を長女の頼子さん、第二受託者を長男の託朗さんにしておくのがいいかと思います。
ちなみに、第二受託者の定めがない場合には、委託者と受益者の合意によって新しい受託者を選任することとなります。また、合意がまとまらなければ、裁判所に新しい受託者の選任を申し立てることもできます。
次回は受益者についてです!
※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また実際の金融機関等の対応は、個別事情などにより異なるケースがあります。