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第24回 財産管理委任契約と家族信託
財産管理委任契約って?
今回は、「財産管理委任契約」と家族信託についてお話しします。
「財産管理委任契約」?初めて聞くわ。
「委任」という言葉は聞いたことがありますか?「委任」は民法に定められた契約類型の1つなんですが、民法の条文では「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」と書かれています。(民法643条)
いまいちイメージがつかめないわね…
委任契約の例としては、弁護士依頼契約、不動産取引仲介契約などがあげられるのですが、つまり委任とは「他人のために労務やサービスを提供する」という契約です。
したがって「財産管理委任契約」とは、財産を持つ人(Aさん)がその財産の管理を他人(Bさん)に任せ、BさんはAさんのために財産管理を行う契約である、といえます。
委任の場合、管理を任される人を「委任者」、任される人を「受任者」といいます。
「財産を持つ人が、その財産の管理を任せる」という点は家族信託みたいね。「委任者と受任者」といった名前も、「委託者と受託者」が登場する家族信託に似ているわ。
そうですね。お気づきのとおり、この2つの制度は似た機能を持っています。
家族信託との違いは?
財産管理委任契約では、契約内容は基本的に自由に定めることができます。つまり家族信託と同じように、不動産の売買や預貯金の引き出しを委任することもできます。
そうすると、家族信託のほかに財産管理委任契約という方法も選択できる、ということですか?
必ずしもそうとは言えません。財産管理委任契約と家族信託は似ているように見えるのですが、実は大きく違う点があるんです。
それは、家族信託は本人の判断能力が低下しても使えるが、財産管理委任契約は本人の判断能力が低下すると使えない、という点です。
例えば、父を委任者、子を受任者とし、父が不動産の売却を子に委任したとします。
ここでポイントとなるのが、家族信託と異なり、財産管理委任契約では不動産の名義は変わらないということです。つまり、不動産の名義は父のままです。
これはすなわち、実際の不動産売却時には名義人である父本人の意思確認が必要になる、ということを意味しています。
このため、もし売却時点で名義人である父の判断能力が認知症等により失われていると、たとえ委任契約があったとしても、本人確認ができない以上は売却ができない、ということになります。
なるほど…本人の判断能力が失われていても売却が可能な家族信託とは大きな違いですね。
そうですね。認知症対策としての財産管理を検討しているのであれば、家族信託のほうが有効だと思います。
次回は任意後見と家族信託についてです!
※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また実際の金融機関等の対応は、個別事情などにより異なるケースがあります。