教えて!サポートさん

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第2回 認知症と口座凍結

口座の凍結って?

■第1回の続きです。サポートさんがトラスト家を訪ね、長女と母の相談に乗っています。

頼子(長女)頼子(長女)

今日はわざわざありがとうございます。万が一父親が認知症になった場合に備えて、色々と聞いておきたいことがあるんです。さっそくなんですが、銀行口座の「トウケツ」ってどういうことなんでしょうか?お隣のおじいさんが認知症になった際に口座が「トウケツ」されて大変だった、と聞いたので…。

サポートさんサポートさん

銀行口座の凍結ですね。凍結とは、文字通り銀行口座が固まり、動かせなくなってしまうことです。具体的には、預金の引出し・口座引落し・解約などが一切できなくなることを意味しています。

頼子(長女)頼子(長女)

一切できなくなってしまうの!?それはお隣さんも大変だったはずだわ…

どうして銀行は口座を凍結するの?

頼子(長女)頼子(長女)

でも、銀行はどうして口座を凍結するの?

サポートさんサポートさん

少し難しい話になりますが、「本人の意思能力が失われてしまった」からです。認知症の方はほとんどの場合、自分自身で何かを決めて行う能力がないとされます。法律的な用語ではこの状態を「意思能力」がない、と定義します。一般的には意思能力よりも「判断能力」と言われることも多いので、これからは「判断能力」と呼ぶことにしますね。
この判断能力がなくなると、法律行為ができなくなってしまうんです。これも法律的に言うと、「判断能力のない者が行った法律行為は無効になる」ということなんです。

信子(母)信子(母)

判断能力に法律行為…むずかしいわね…。


サポートさんサポートさん

みなさんが日ごろ何気なく行っている預金の引出しや解約は、さきほど説明した「法律行為」にあたるんです。つまり、「認知症になると法律行為ができない(無効になる)」→「預金の引出しは法律行為である」→「だから認知症になると預金引出しはできない」という論理になるんです。つまり銀行としては、無効になるような預金の引出しを行うわけにはいかないんですね。

頼子(長女)頼子(長女)

うーん、なんとなくわかるような…

サポートさんサポートさん

また「本人保護」という観点からも説明することができます。判断能力がない方の口座から本人以外が引出しを行うことは危険なので、本人の財産を守るための手段として口座を凍結するのです。

サポートさんサポートさん

また口座の不正利用や詐欺、親族間のトラブルを防止するというため、ということも凍結の理由といえます。

頼子(長女)頼子(長女)

でも、銀行はいつ本人が認知症になったことを知るのかしら?

サポートさんサポートさん

あくまでもケースバイケースですが、本人が窓口に赴いた際に発覚したとか、施設への入所費用などについてご家族が窓口に相談にいったときに判明した、といったケースなどがあるようです。

家族でもおろせない?

信子(母)信子(母)

妻や子どもでも引出しはできないのかしら。

サポートさんサポートさん

はい、たとえご家族であってもできません。最近では金融機関における本人確認が厳しくなってきているので、ご家族が通帳と印鑑を窓口に持っていっても、引出すことはできないんです。

頼子(長女)頼子(長女)

介護費用とか、施設への入所費用だとしても?

サポートさんサポートさん

残念ながら、理由のいかんにかかわらず認められないと考えてください。

信子(母)信子(母)

お父さんの口座の暗証番号を知っているんだけど…。ちょっとお父さんの様子が危ないかな、って思ったときに、凍結前にキャッシュカードで引き出すこともできないの?

サポートさんサポートさん

預金の引出しが確実に本人の同意に基づくものであって、かつそれを明らかにできるのであればともかく、その時点で本人の判断能力に問題があった場合などにはトラブルのもとになりかねないので、おすすめはできません。

預金引出し以外にもできなくなることが?

信子(母)信子(母)

口座の凍結って想像以上に大変なのね…。

サポートさんサポートさん

そうなんです。口座の名義人が亡くなった場合にその口座が凍結されるということはご存知の方も多いのですが、認知症で凍結されるということは、あまり知られていないかもしれないですね。さらにいうと、預金の引出し以外にもできなくなってしまうことがあります。典型的なのは不動産の売却ですね。例えば、今後の入院費や介護費を捻出するために土地を売ろうとしても、さきほどの「認知症になると法律行為ができない」というルールにより、売ることができなくなってしまうんです。

頼子(長女)頼子(長女)

そうか…。そうすると、家族が認知症になって急にお金が必要になったとしても、何もできなくなってしまうの?

認知症になってしまったら、成年後見を利用すれば安心?

サポートさんサポートさん

いえ、その場合には成年後見制度を利用することで、本人のお金を引出したり、不動産の売却ができるようになります(一定の制限はあります)。

頼子(長女)頼子(長女)

あ、お隣さんが銀行から言われたったいう、成年後見ね!ということは、成年後見を使えば、認知症になっても結局は安心なのね?

サポートさんサポートさん

いえ、実は成年後見を利用したとしても、それだけで安心とは必ずしもいえないのです。

頼子(長女)頼子(長女)

え?そうなの?

今回のまとめ
ポチ(柴犬)ポチ(柴犬)

認知症による銀行口座の凍結とは、本人の判断能力低下を理由に、預金の引出し・口座引落し・解約などができなくなってしまうことをいいます!次回からは、成年後見制度について説明していきます!

※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また実際の金融機関等の対応は、個別事情などにより異なるケースがあります。